細菌やゾウリムシに寿命はあるの?分裂してふえる微生物の「年のとり方」
公開日:2026/10/04
犬や猫には「平均寿命は〇年」という数字があります。では、目に見えないほど小さな細菌やゾウリムシには、寿命はあるのでしょうか?
体が2つに分かれてふえる微生物は、「親が死んで子が残る」という形になりません。そのため、ちょっと不思議な「年のとり方」をしています。
大腸菌は約20分で2つに分かれる
大腸菌は、長さ2〜6マイクロメートル(1ミリの数百分の1)ほどの細菌で、人や動物の腸にすんでいます。条件がよいと、大腸菌など多くの細菌は約20分ごとに2つに分かれてふえます。
1匹が2匹、2匹が4匹……と分かれていくので、どちらが「親」でどちらが「子」なのか、見た目では区別がつきません。そのため長いあいだ、「分裂してふえる細菌は年をとらない」と考えられていました。
じつは細菌にも「老い」があった
2005年、大腸菌が分裂するようすを顕微鏡で何世代も追いかけた研究が発表されました。すると、細胞の古いほうの端を受けついだ細胞は、だんだん育つのがおそくなり、ふえにくく、死にやすくなっていたのです。
見た目は同じように2つに分かれても、中身は「年をとった側」と「若返った側」に分かれていた、ということです。小さな細菌にも、老化のようなしくみがあるとわかってきました。
ゾウリムシは分裂できる回数が決まっている
ゾウリムシも、体が2つに分かれてふえる生きものです。ところが、分裂だけをくり返していると、ある回数でその系統は絶えてしまいます。ゾウリムシのなかまでは、最大でも658回分裂したところで必ず絶えたという研究があります。ゾウリムシの寿命は、日数ではなく「分裂の回数」で決まっているのです。
そこで役に立つのが接合です。2匹がくっついて遺伝子を交換すると、分裂できる回数がリセットされ、若返ります。
アメーバは?
アメーバもふつうは2つに分裂してふえます。まわりの環境が悪くなると、シストという殻をつくって休眠する種類もいます。ただ、アメーバの「寿命」をはっきり示した数字は見つかりませんでした。
納豆菌の「芽胞」はとても長生き
納豆をつくる納豆菌は、枯草菌(こそうきん)のなかまです。こうした細菌の一部は、まわりの状態が悪くなると芽胞(がほう)という何重もの殻に包まれた休眠の姿になります。芽胞は熱や乾燥、薬にとても強く、長いあいだ眠ったままでいられます。
何百万年も眠っていた細菌?
2500万〜4000万年前のこはくに閉じこめられたハチのおなかから、細菌の芽胞を生き返らせたという報告があります。さらに、2億5000万年前の塩の結晶の中から細菌を取り出したという報告もあります。
ただし、「2億5000万年前」の細菌は、遺伝子が今の細菌とほとんど同じでした。そのため、あとから混ざったものではないかと疑う声もあります。本当に大昔から生きていたのかは、まだはっきりしていません。
寿命がある「ミクロのいきもの」も
同じミクロの世界でも、細菌とちがって体がたくさんの細胞でできている生きものには、ちゃんと寿命があります。ミジンコは約10〜30日、線虫(C.エレガンス)は約3週間です。一方で、ヒドラやプラナリアのように「年をとらない」と考えられている生きものもいます。
- クマムシ:乾くと「たる」のような姿になり、何年も眠って生き返る
- ミジンコ:メダカのエサでおなじみ
- ヒルガタワムシ:約2万4000年眠っていた個体が生き返った
- ヒドラ:年をとっても死にやすくならない
- プラナリア:体を切っても再生する
出典
- 細菌の分裂(約20分):コトバンク「細菌」、「大腸菌」
- 細菌の老化:Stewart ほか(2005)PLoS Biology「Aging and death in an organism that reproduces by morphologically symmetric division」
- ゾウリムシの分裂回数と接合:コトバンク「ゾウリムシ」、Takagi & Yoshida(1980)J Cell Sci
- アメーバ:コトバンク「アメーバ」
- 芽胞・納豆菌:コトバンク「芽胞」、「納豆菌」、Nicholson ほか(2000)
- こはくの中の細菌:Cano & Borucki(1995)Science
- 2億5000万年前の塩の中の細菌:Vreeland ほか(2000)Nature、反論:Nickle ほか(2002)



